水素は発電や熱源だけでなく地域インフラやモビリティまで裾野を広げており、脱炭素と事業競争力を同時に引き上げる鍵です。ここでは、水素の活用事例を各分野ごとに紹介しています。導入検討の参考情報としてご活用ください。
大阪ガスでは、環境省委託事業の「既存のインフラを活用した水素供給低コスト化に向けたモデル構築実証事業」のもと、カーボンリサイクルを軸とした次世代エネルギーの創出に向け、カーボンリサイクルファクトリー内に合成メタン(e-メタン)をつくるための実証設備「化けるLABO(ラボ)」を設置。
水電解で製造した水素と、バイオガスから回収した二酸化炭素を使い、「サバティエ反応」と呼ばれる化学反応によって、都市ガスの代替となるe-メタンの製造を実現しています。
この実証では、カナデビアの水素製造装置(20Nm³/h)とメタネーション装置(5Nm³/h)の両方を組み合わせたシステムを導入。既存の都市ガスインフラを活用したカーボンリサイクルモデルの構築を目指しています。
カナダ・ケベック州ベカンクールには、世界的に大規模なPEM(プロトン交換膜)電解装置が設置されており、水力発電による再生可能エネルギーを利用してグリーン水素を製造しています。
この装置は、1日最大8.2トンの低炭素水素を生成し、カナダおよび米国の産業用顧客に安定的に供給。環境負荷を抑えつつ、大量の水素を持続的に生産・供給できる体制を構築し、脱炭素社会の実現に貢献しています。
三浦工業は、燃焼時にCO₂を一切排出しない水素燃料ボイラーの実用化に取り組んでおり、化学メーカーで副生水素を熱源として有効活用する導入事例もあります。
山梨県ではNEDO事業の一環として、再生可能エネルギー由来の水素を活用。水素燃料ボイラーを活用したCO₂フリーのP2G(Power to Gas)熱利用システムの実証が行われています。
関西電力では、水素発電の社会実装に資する運用技術の確立を目指し、姫路第二発電所にて水素混焼発電実証を開始。実証に向けて、最大200Nm³/hの水素を製造するカナデビアの水電解装置を3基導入しました。
水素の安定供給を通じて、水素混焼発電の信頼性・安全性の検証が進められています。
川崎重工は、既存の天然ガスタービンを改造せずに水素燃料へ適応させる独自技術を開発し、都市部での1MW級水素ガスタービン発電に成功しました。水素の高温燃焼によるNOₓ排出を抑制するため、水を使わず極小ノズルから噴射する「マイクロフレーム」技術を用いた乾式低NOₓ燃焼方式を開発。
2020年にはこの方式による100%水素燃焼の実証運転を実現しました。この技術は、大規模かつCO₂フリーな発電を可能にし、水素社会と脱炭素社会の実現に大きく貢献するものです。
「Take-Offプロジェクト」では、回収したCO₂と再生可能水素を用いて、持続可能な航空燃料を製造する革新的なプロセスの開発・実証を実施。CO₂と水素を直接的あるいは間接的に軽質オレフィンへと変換し、最終的に航空燃料として利用する技術の確立を目指しています。
水素はCO₂を化学的に転換するための原料として活用されており、電解によって製造される再生可能水素の安定供給がプロセスの鍵です。水素製造では、旭化成が水電解技術を提供するサプライヤーとして参画し、電解槽の供給を担っています。
トヨタの燃料電池車「MIRAI(ミライ)」は、水素と空気中の酸素を化学反応させて発電し、その電気で車を走らせます。この仕組みで走行中に排出されるのは水のみで、二酸化炭素や有害ガスを出しません。
水素は専用ステーションで充填でき、炭素繊維強化タンクに高い信頼性をもって貯蔵されます。MIRAIは約647kmの航続距離を持ち、後輪駆動によるダイナミックな走行性能も両立。高い環境性能と走行性能を両立した次世代型車両として、水素エネルギーの実用的な活用事例となっています。
水素燃料旅客列車「Coradia iLint」は、ドイツで開発・運行されており、水素と酸素の化学反応から電力を生み出す燃料電池によって走行します。この列車は走行時に二酸化炭素を排出せず、排出されるのは水だけという、まさに「燃やさない列車」です。
電化されていない路線でも最大1,000kmの長距離運行が可能で、環境負荷の少ない持続可能な交通手段として注目されています。クリーンエネルギーの転換やスマートな電力管理など、革新的技術を融合させ、脱炭素社会の実現に大きく貢献しました。
山口県周南市では、中国・四国地方で初となる水素ステーション「イワタニ水素ステーション山口周南」が2015年に開業しました。近隣にある苛性ソーダ工場や液化水素製造工場との連携により、製造・輸送・供給・利用までが地域内で完結する「地産地消型サプライチェーン」が確立。
水素を活用した燃料電池車も公用車として導入され、地域ぐるみでの活用が進み、次世代エネルギー社会の先導モデルとなっています。
福島県浪江町では、再生可能エネルギーから水素を製造する「福島水素エネルギー研究フィールド」が展開されています。
本プロジェクトでは、1時間あたり約1,200Nm³の水素を製造可能な1万kW級の装置を備え、電力需給バランスに応じて水素製造量を調整する仕組みを導入。約150世帯分の月間電力供給、または560台の燃料電池車への水素充填が可能です。
水素需要予測システムと電力制御システムを連携させることで、再エネの利用を効率化し、CO₂排出を抑えながら地域の脱炭素化を実現するモデルケースとして注目されています。
ここまで、産業・モビリティ・地域エネルギーなど、さまざまな分野における水素製造装置の活用事例をご紹介してきました。これらの事例からもわかるように、水素の使い方や運用環境によって求められる装置の方式や仕様は大きく異なります。
装置の選定を誤ると、性能を十分に発揮できなかったり、想定以上に運用コストがかかるケースもあるため、用途や運転条件に適した装置仕様を選ぶことが重要です。
本サイトでは、用途別におすすめの装置をまとめていますので、選定の参考にしてください。
地域ステーションの開設では、需要密度と輸送距離が採算を左右します。周南市のように液化工場と一体計画すると、輸送コストを抑えつつ広域供給拠点として展開できます。
一方、需要予測が過大だと遊休設備が発生しやすく、官民でロードマップとKPIを共有することが成功の鍵です。
モビリティ実証では、航続距離と充填時間でバッテリー電気自動車(BEV)との差別化が明確ですが、ステーション網が整備されないと利用拡大は頭打ちになります。解決策としては、発生装置・貯蔵・利用を面的に配置するクラスター型開発が有効です。
また、分野を問わず共通する課題として、保安認可や地元合意形成に時間を要する点が挙げられます。計画初期から消防・自治体・住民と対話を重ね、リスクコミュニケーションと並行することが導入成功の近道です。
水素を電気・
熱エネルギー供給に使いたい
小売電気・再エネ発電・
地域熱供給事業者向け
水素を燃料として
使いたい
自動車メーカー・
水素モビリティ事業者向け
水素を洗浄工程で
使いたい
半導体・
精密部品メーカー向け