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PEM水素とは?

目次

再生可能エネルギーの余剰電力を無駄なく活用し、クリーンな水素を現場で作り出せる技術としてPEM(固体高分子膜)水電解が注目されています。ここでは、脱炭素に向けて水素製造装置の導入を検討する際、まず押さえておきたい基礎知識を解説します。

PEM水電解
(PEM水素製造)とは

PEM水電解とは、固体高分子(プロトン交換)膜を電解質として用い、純水に直流電圧をかけて水素と酸素に分解する技術のこと。反応部がコンパクトで高電流密度を得やすく、装置を小型化しやすいことが特徴です。

発生する水素は99.99%まで純度を高められ、燃料電池車や半導体製造のような高純度を求める用途にも供給ができます。常温常圧付近でも運転できるので安全性が高く、グリーン水素製造の主流となっている方法です。

※装置の仕様や使用環境によります。

PEM水電解の仕組み

PEM水電解では、陽極側で水が酸素とプロトンに分離し、プロトンが水分子だけを通す固体高分子膜を透過して陰極へ移動します。陰極側では電子と再結合して水素ガスとして放出されます。

膜がイオンのみを選択して通すためガスが混ざらず、装置内部には水酸化カリウムなどの薬液が不要で腐食や漏えいリスクが小さいのが特徴です。

セルを複数枚重ねたスタックに電流を流すことで、必要な流量まで拡張できます。高圧運転も可能なため、後段の圧縮機にかかるエネルギーを節約できる利点もあります。

PEM水電解式と
アルカリ水電解式の違い

水電解による水素製造にはいくつかの方式がありますが、現在主に使われているのが「PEM(水素イオン交換膜)水電解式」と「アルカリ水電解式」です。両者は構造や反応環境が異なり、それぞれに適した用途があります。

アルカリ水電解式は、水酸化カリウムなどのアルカリ性電解液を用いた水電解技術で、構造がシンプルで装置コストが抑えやすいのが特徴です。PEM方式に比べて装置サイズは大きめですが、大規模な水素製造に向いており、工業用水素の供給など、安定した運転が求められる用途に適しています。

一方、PEM水電解式は固体高分子膜を使い、装置がコンパクトで起動・停止が早く、再生可能エネルギーとの連携に適している方法です。

どちらを選ぶべきか?

PEM方式とアルカリ方式は、それぞれに異なる特長があり、用途や運用条件によって適した方式が異なります。再エネとの連携や柔軟な運用を重視する場合はPEM方式、安定稼働や大規模供給を前提とする場合はアルカリ方式が選ばれることが多いです。

装置選定には、水素をどのように使うのか(電気・熱エネルギー、熱量、洗浄など)や、運用のスケール、コスト要件などを総合的に検討することが欠かせません。当サイトでは、用途別におすすめの水素製造装置を紹介しているので、装置選びに迷った際はぜひご活用ください。

PEM水素のメリット

負荷変動に強く、
再エネと相性がよい

固体電解質と薄い膜構造のため内部抵抗が小さく、電流を0~200%相当まで瞬時に追従できます。1秒ごとに変動する風力・太陽光プロファイルでも安定運転が可能で、サブセカンド応答で周波数調整にも寄与。余剰電力を効率的に水素へ転換でき、系統調整コストの削減にも貢献します。

水素の純度が高く、
さまざまな用途に使える

膜が陽極と陰極のガスを厳密に分離するため不純物の混入がなく、ISO14687に準拠する高純度の水素製造が可能です。高純度水素は半導体プロセスや燃料電池車、水素炎イオン化検出器(FID)など、幅広い分野で利用できます。

薬液を使用せず、運用が容易

使用する流体は純水のみで、強アルカリ水溶液の補給や廃液処理が不要です。腐食の進行が遅く、保守はフィルターとイオン交換樹脂の交換程度で済むため、クリーンルームや製薬工場でも導入しやすい運用性を備えています。

PEM水素の用途

PEM方式で製造される高純度かつ安定供給が可能な水素は、特に以下のような分野で活用されています。

輸送分野燃料電池自動車(FCV)、バス、トラックなどの動力源。
CO₂排出を抑えつつ、高い走行性能と短い燃料補給時間を実現。
定置型発電・コージェネレーション住宅用燃料電池(エネファーム)や商業施設向けの定置型発電装置として、水素を電力と熱に変換。
家庭の省エネ・節約や、施設のエネルギー効率向上に貢献。
産業用途アンモニア、メタノールの合成、石油精製プロセスなどの原料水素として使用。
高純度の水素が求められる化学プラントで重宝されます。
エネルギー貯蔵・
グリッドバランシング
再生可能エネルギー発電で余剰となった電力をPEM電解で水素に変換し貯蔵。
需要ピーク時に燃料電池で再び電力化し、電力網の安定化を図ります。
バックアップ電源・
非常用電源
停電や災害時の非常用発電装置として利用。
短時間で稼働でき、燃料補給も簡単なため、病院やデータセンターでの採用が進んでいます。
ポータブル電源・
遠隔地電源
アウトドア、建設現場、無人観測所などの小型発電機やポータブル電源として使用。
軽量・コンパクトなシステムで、場所を選ばずクリーンな電力を供給。

PEM水電解の今後の展望

経済産業省は2023年に改訂した水素基本戦略で、2030年までに国内外15GWの水電解装置導入と1Nm³当たり30円の供給コストを掲げました。

PEM水電解は迅速な負荷追従性と高純度供給能力により、再エネ大量導入時代の分散型エネルギーインフラの鍵を握る技術として期待されており、国内での推進も活発になり始めています。